日本臨床細胞学会雑誌
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AgNORs染色を細胞診に応用するための基礎的検討
名古屋 美智椎名 義雄山宮 幸二郡 秀一飯島 淳子藤井 雅彦
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1993 年 32 巻 6 号 p. 884-894

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抄録

AgNORs (nucleolar organizer regions) 染色を細胞診塗抹標本に応用するために, HeLa229細胞を用いた固定法・染色条件の基礎的検討と, 乳腺25症例 (線維腺腫8例, 乳腺症・葉状腫瘍各1例, 乳頭腺管癌・充実腺管癌各6例, 硬癌2例, 粘液癌1例) を用いた評価法の検討を行った.
その結果, いずれの固定法においても銀反応は20℃ ・60分間行ったものが最適であった.湿固定標本で得られる核小体様AgNORsの評価は出現個数・大きさ・1AgNOR面積と全AgNORs面積のそれぞれ核面積に占める割合および不整形AgNORsを有する細胞の割合の5項目について行った.不整形AgNORsを有する細胞の割合は, 良性病変で9.7%, 悪性病変では24.5%と両者の問に有意差を認めた (p<0.005) が, 出現個数や大きさなどにおける計測からは有意差は得られなかった.乾燥標本で得られる核小体内AgNORs顆粒の評価結果は, 10個以上顆粒を有する細胞が悪性病変において75.6%と良性病変の8.7%に比べ多数観察された.さらに悪性病変ではAgNORs顆粒が核小体内に充満している細胞を多数認め, それらは細胞増殖能が高いことが示唆された.
以上の結果から乳腺細胞診標本におけるAgNORs染色は, 乾燥標本を用いそれらの数や分布状態に着目して評価することが望ましいと考えられた.

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