日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
転移病巣で著明な漿液性腺癌の像を示した子宮類内膜腺癌の1例
伏木 弘結城 浩良寺畑 信太郎田所 猛三井 由紀子大橋 美香熊野 睦子
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 39 巻 5 号 p. 312-317

詳細
抄録

背景: 漿液性腺癌は, 子宮内膜癌においてまれな腫瘍である.同一症例に成因が異なるといわれている類内膜腺癌と漿液性腺癌が共存したきわめてまれな1例を経験したので報告する.
症例: 65歳, 0経妊.50歳に閉経.不正性器出血のため受診し, 子宮内膜吸引細胞診で, 腫瘍性背景のなかに, 比較的大型の細胞集塊を認め, N/C比の増大, クロマチンの増量, 腫大した核小体と核の偏在もあり子宮内膜癌と診断し, 根治手術を施行した.肉眼的に癌は, 子宮漿膜まで達し腹膜播種および大網転移もみられた.腹腔洗浄細胞診は陽性で, 病理組織所見は体部を主体とする浸潤癌で, 高分化型類内膜腺癌の像に加え, 高度の細胞異型を示し乳頭状に発育する漿液性腺癌の合併が示唆された.さらに両側の卵巣, 大網および左閉鎖リンパ節への転移巣は, 漿液性腺癌像を示していた.術後臨床進行期は, FIGO IIIc期であり, cisplatin+adriamycin+cyclophosphamideによる化学療法を6コース施行した.
結論: 類内膜腺癌と漿液性腺癌が共存したきわめてまれな例を経験したが, 厳重な経過観察と周期的な追加化学療法が必要であると考えられた.

著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top