日本臨床細胞学会雑誌
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左腋窩原発のアポクリン腺癌の1剖検例
その肺転移巣, 胸水, 喀痰, 尿における細胞像
蔦 幸治赤松 孝子岡野 公明中島 徳郎大貫 雅子為政 大幾堀尾 武螺良 愛郎
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2000 年 39 巻 5 号 p. 335-339

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抄録

背景: 皮膚アポクリン腺癌はまれな腫瘍で, 細胞学的報告は少なく, 穿刺吸引や擦過細胞の検体に限られている.今回, 左腋窩原発のアポクリン腺癌術後に多臓器転移を来した1剖検例を経験したので, その喀疾, 胸水, 尿, ならびに剖検時の捺印細胞診所見を中心に報告する.
症例: 68歳, 男性.11年前より左腋窩に腫瘤を自覚するも放置, 3年前に腫瘤が増大し生検にてアポクリン腺癌と診断され腫瘤切除術を受けた.以降, 皮膚・肺を中心に再発転移を来たし, 化学療法, 放射線療法を受けたが, 呼吸不全にて死亡した.剖検にて左腋窩原発アポクリン腺癌の肺を中心とする多臓器転移と診断した.
結論: 喀疾, 胸水, 尿, 腫瘍捺印における細胞像で豊富な細胞質を有し, 明瞭な核小体を持つアポクリン腺癌を示唆する細胞が認められた.また, 免疫組織学的にもこれらの細胞はB72.3が陽性を呈した.上記特徴とB72.3陽性所見は診断に有用と考えられた.

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