2000 年 39 巻 5 号 p. 389-395
目的:子宮内膜細胞診において類内膜腺癌の診断を行う場合, 腺構造の複雑性を反映した細胞集塊の出現様式に関する解析は重要と考えられる.そこで今回, 類内膜腺癌G140例において, 腺密集増殖集塊や樹枝状集塊に注目し, 出現率や集塊中の腺腔数について検討し, あわせて複雑型内膜異型増殖症や複雑型内膜増殖症とも比較を行った.
結果: 類内膜腺癌G1においては, 樹枝状集塊の1症例中平均出現率8.2%, 出現症例率は62.5%, 腺密集増殖集塊は同様に29.0%, 92.5%で, 腺密集増殖集塊がより高頻度に出現していた. また, 腺管構造の複雑性を表わすと思われる腺密集増殖集塊中の腺腔数を算定したところ, 類内膜腺癌の平均は16.9個, 異型増殖症11.7個, 増殖症6.5個で, 各疾患群間に有意差を認めた (p<0.01).特に, 15個以上であれば異型増殖症以上の病変推定の指標, さらに21個以上であれば, 類内膜腺癌G1推定の指標となりうる可能性が示唆された.
結論:以上のことから, 腺密集増殖集塊における腺腔数の観察は類内膜腺癌の細胞診断上重要と思われ, 他の判定項目に加えて総合的な判定を行うことが有用と思われた.