日本臨床細胞学会雑誌
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体腔液中の腺癌, 悪性中皮腫, 反応性中皮の細胞鑑別におけるAgNORs染色の有用性の検討
岡村 宏渋田 秀美光野 彩子亀井 敏昭佐久間 暢夫石原 得博山下 吉美佐藤 正和村上 一郎
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2000 年 39 巻 6 号 p. 445-452

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抄録

目的: AgNORs染色を体腔液細胞診に応用し, 腺癌, 悪性中皮腫および反応性中皮の比較検討を行った.
方法: 腺癌44例, 悪性中皮腫10例, 反応性中皮45例の体腔液細胞診標本を用い, one-step法にてAgNORs染色を施行した.核1個あたりのAgNORs平均個数 (mAgNOR) と一核あたり2個以上, 3個以上, 4個以上, 5個以上のAgNORsを有する細胞の対象細胞に対する割合 (%)(pAgNOR≧2, pAgNOR≧3, pAgNOR≧4, pAgNOR≧5) を算出した.
成績: mAgNOR (平均値±標準偏差) は腺癌が4.08±0.71, 悪性中皮腫が2.59±0.59, 反応性中皮が2.34±0.30であり, 腺癌は, 悪性中皮腫および反応性中皮に比し有意に高値を示した (p<0.001).pAgNOR≧5 (平均値±標準偏差) は, 腺癌が34.6±17.1%, 悪性中皮腫が5.9±7.5%, 反応性中皮が3.6±3.2%であり, 腺癌は, 悪性中皮腫および反応性中皮に比し有意に高値を示した (p<0.001).悪性中皮腫と反応性中皮の間ではいずれの指標においても有意差を認めなかった.
結論: 体腔液細胞診においてAgNORs染色は腺癌と悪性中皮腫, 腺癌と反応性中皮の鑑別に有用である.

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