日本臨床細胞学会雑誌
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骨・軟骨化生を伴う乳癌の1例
木村 洋稲本 和男神崎 由佳藤田 葉子布村 眞季若田 泰永田 文雄藤田 琢史
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2000 年 39 巻 6 号 p. 493-496

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抄録

背景: 比較的まれな骨・軟骨化生を伴った乳癌を経験したので報告する.
症例: 58歳, 女性, 10ヵ月前より右乳房 (CD領域) に直径2.5cm程度の腫瘤を自覚していたが放置.腫瘤の増大傾向著明のため当院を受診.臨床所見にて悪性腫瘍が疑われ, 穿刺吸引細胞診で乳管癌と判定した.穿刺吸引細胞所見は, 壊死性の背景に疎な結合を示す腫瘍細胞が小-中集団で出現していた.N/C比は高く大小不同があり, 核は類円形でクロマチンは細-粗穎粒状を呈し大きな核小体も認められた.また, 問質細胞様細胞も出現していた.組織標本では, 多量の間質粘液を含む紡錘形-円形異型細胞がみられた.また軟骨様の胞巣を形成する部分と, 一部に明らかな腺腔を呈する乳管癌像を認め, 骨・軟骨化生を伴う乳癌と診断した.
結語: 細胞診標本では, 軟骨細胞がみられず判定困難であったが, 明らかな腺癌細胞に加え問質様細胞を認めた場合, 本腫瘍の存在も念頭に置く必要があると思われる.

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