背景: 比較的まれな脊髄腫瘍である粘液乳頭型上衣腫 (Myxopapillary ependymoma, 以下MPE) の1例を経験したので, 細胞像を中心に検討した結果について報告する.
症例: 症例は19歳, 女性.13歳頃より腰痛出現, 近医受診し, 牽引治療など受けるも症状が改善せず, 当院整形外科を紹介された.画像検査などで脊髄腫瘍と診断され, 腫瘍摘出術が施行された.術中迅速病理検査時の細胞診圧挫標本では, 腫瘍細胞は細長くのびた細胞質が網目状に絡み合い, 粘液様物質を取り囲んで球状構造を形成していた.毛細血管を中心にして粘液様物質を伴ったシダの葉様乳頭状構造を呈する細胞集団も認められた.腫瘍細胞の核は円形ないし類円形で異型が乏しく, クロマチンは均等分布していた.
脊髄腫瘍においてMPEと鑑別を要する腫瘍は神経鞘腫, 髄膜腫, 神経膠腫などである.特に神経鞘腫との鑑別が問題となるが, MPEの方が細胞診標本上での細胞量が豊富であり, 細長く伸びた細胞質や粘液様物質を取り囲む細胞を観察することが重要となる.
結論: MPEの特徴である粘液様物質と腫瘍細胞の関係を観察するために, 組織標本に加え, 圧挫や捺印細胞診標本を併用することは情報量・操作性の面で診断に有用性が高いと思われた.