日本臨床細胞学会雑誌
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骨髄および末梢血塗抹標本中に集塊形成を認めたangiotropic lymphomaが推定された1例
宮本 敬子岩井 宗男宮平 良満吉田 孝藤澤 愛岡部 英俊
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2000 年 39 巻 6 号 p. 512-516

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抄録

背景: 骨髄や末梢血の塗抹材料中に集塊形成を認めた悪性リンパ腫の一亜型であるangiotropiclymphomaと考えられた1例を経験したので報告する.
症例: 患者は67歳女性で, めまい, 耳鳴りで発症し, 半盲, 片麻痺などの神経症状や痴呆性の症状を呈した。6ヵ月間に画像上で脳梗塞様の所見を多発した.骨髄穿刺塗抹標本中に胞体内に微細空胞を有する大型異型細胞が接着性を示す集塊を形成し出現していた.免疫細胞化学的にはCD20陽性でBリンパ球系由来であった.また接着分子CD44も陽性所見を示した.MRIで新たな梗塞像を認めLDH, CRPが上昇し血小板が減少している時期の末梢血中に, 骨髄で認められた細胞と同様の異型細胞集塊が出現していた.
結論: angiotropic lymphomaは, 一般的には骨髄や末梢血中に腫瘍細胞が出現することはまれであるとされているが, 画像や臨床所見を十分把握し, 症状の悪化時に末梢血スメアの丹念な細胞学的検索を行い特徴的な腫瘍細胞の集塊を検出することより, 生前診断が困難とされているこの種のリンパ腫の診断向上に寄与しうる可能性が示唆された.

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