日本臨床細胞学会雑誌
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転移性腺癌と鑑別が困難であった左鼠径部子宮内膜症の1例
川畑 圭子渡辺 騏七郎尾崎 聡石山 進安藤 さおり丹後 正紘
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2000 年 39 巻 6 号 p. 536-540

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抄録

背景: 左鼠径部に4cm大の硬い腫瘤を呈し, 画像を含む臨床および細胞診所見で悪性とみなされたが, 摘出生検でリンパ節をまきこんだ鼠径部子宮内膜症と判明したまれな1例を報告する.
症例: 患者は43歳, 女性.主訴は左鼠径部腫瘤.5年前より同部に腫瘤を認め, 1年前よりときどき痺痛が出現していた.超音波およびCT検査で悪性腫瘍のリンパ節転移が強く疑われた.穿刺吸引細胞診では, 炎症細胞と壊死物質を背景にして, 異型は乏しいが上皮性結合集団が出現していた.“リンパ節穿刺” と称されて提出されたため.classV, 腺癌のリンパ節転移と診断した.しかし, 精査するも原発巣を見い出せず, 腫瘤の摘出生検が施行された.
生検組織像で, fibrosisを伴い, リンパ節を巻き込んだ左鼠径部軟部組織の子宮内膜症と判明した.なお, 患者は2歳時に左鼠径ヘルニアの手術を受けている.
結論:本例の細胞診上の反省点として, リンパ節穿刺と称された材料でも, 上皮性細胞があるからといって短絡的に悪性とせず, 必ず, 明瞭な悪性所見の有無を注意深く確認すべきことを痛感した.子宮内膜症が増加傾向にある現在, 性成熟女性の腹部の細胞診では, 本症を常に念頭におく必要があると思われた.

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