背景:組織学的に肺異型腺腫様過形成atypical adenomatous hyperplasia (AAH) と診断された症例の擦過細胞診標本を作製したので, その細胞所見の特徴を挙げる.また, 核面積に関しての検討を行ったので, 合わせて報告する.
症例:48歳, 女性.気管支拡張症で加療中, 血疾が出現したため胸部CT検査を施行したところ, 左肺下葉に最大径10mmまでのlocalized-ground glass opacity (l-GGO) を呈する病変が計3つ認められた.AAHないし高分化型腺癌疑いのもと, 1つの病変に対して術中迅速検査が施行され, high-grade AAHと診断された.この際同時に作製した擦過細胞診標本では, 出現細胞は平面的配列を示し, 異型は弱いものの軽度の核腫大と核内封入体の出現を認めた.また, 核面積を測定し正常細胞と比較したところ, 腫瘍細胞の方がやや大きく, 大小不同がみられることがわかった
結論:今後l-GGO病変に遭遇した場合, 腺癌の可能性について考慮するのみならず, 細胞異型が弱い場合でもAAHの細胞学的特徴を捉え, その可能性を積極的に指摘することが重要であると考えられた.