抄録
背景:卵巣癌肉腫はきわめてまれであり, 卵巣悪性腫瘍の1%以下とされている. 加えて, 腹水中に出現した卵巣癌肉腫の細胞所見を詳細に記載した報告もまれである. また, これらの報告では腺癌と組織型推定されている. 今回, 再発患者の腹水中に肉腫と判断される細胞が出現した症例を経験したので, その細胞像と病理組織像を比較検討した.
症例:50歳, 女性. 主訴は下腹部痛. 平成12年6月, 内診および画像診断により最大径20cm大の卵巣腫瘍が指摘された. 同年7月, 術中の腹水細胞診にてClass V腺癌, 迅速組織診にて癌肉腫とされ, 単純子宮全摘術, 両側付属器切除術, 大網切除術および骨盤リンパ節郭清術が施行された. その後, 化学療法が行われたが再発し, 翌年3月, 腹腔内再発腫瘍切除術が施行された. 同時に行われた術中の腹水細胞診にて, 上皮性結合, 細胞質内の粘液や核縁の肥厚は認められず, 細顆粒状のクロマチン, 核の切れ込み, 核小体周囲の明庭などが確認されたところから, 肉腫細胞が示唆された.
結論:まれな卵巣癌肉腫の細胞所見を呈示した. 腹腔内に進展する場合, 腺癌と細胞診断されることが多いが, 本症例では肉腫が再発の原因であった.