日本臨床細胞学会雑誌
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穿刺吸引細胞診にて診断しえた乳腺原発悪性リンパ腫5例
鮫島 千恵北村 隆司根神 仁志津田 祥子楯 玄秀塩川 章光谷 俊幸太田 秀一
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2005 年 44 巻 5 号 p. 298-303

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抄録

背景:乳腺悪性腫瘍としてはまれな乳腺原発悪性リンパ腫5例の細胞像について報告した.
症例:患者は52歳から84歳の女性で, 主訴は全例乳房腫瘤であり, 腫瘍径は2.1~8.7cm大であった. 同側リンパ節転移が5例中1例にみられ, この症例は最も腫瘍細胞が大型であった. 穿刺吸引細胞診では5例とも, 豊富な腫瘍細胞が孤立散在性に認められ, 背景にはlymphoglandular bodyがみられた. また個々の腫瘍細胞は比較的小型でN/C比が高く, 大型明瞭な核小体を持ち, クロマチンは細顆粒状で密に増量していた. 著しい核形不整を示す症例が5例中2例に認められた. 以上の所見から全例を細胞学的に悪性リンパ腫と診断し, 組織学的検索で, びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と確認された. 全例に外科的根治術が行われ, 5例中4例に追加化学療法, 3例に放射線療法が施行された.
結語:今回報告した全例で, 細胞判定は悪性で, 悪性リンパ腫と推定診断されており, 穿刺吸引細胞診が乳腺原発悪性リンパ腫の摘出生検の縮小に一役を担う検査法になると思われた. 今後は, 乳腺原発悪性リンパ腫の予後を検討するには, 亜分類を含めた詳細な組織学的分類やCD5, bcl-2, p53などの免疫組織学的予後因子を踏まえた検討が必要であると考えられた.

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