日本臨床細胞学会雑誌
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腹水中に腫瘍細胞を認めた子宮肉腫の1例
大久保 和俊九島 巳樹狩野 充治外池 孝彦福田 ミヨ子津田 祥子矢持 淑子岡井 崇
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2006 年 45 巻 2 号 p. 116-120

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抄録

背景: 子宮肉腫は通常, 術後の病理組織検査で診断され, 術前に細胞標本が得られることはまれである. 今回, 画像検査などで原発巣が不明であった腹腔内腫瘍で, 術前の腹水中に腫瘍細胞を認めた症例を経験したので報告する.
症例: 38歳, 女性. 巨大腹部腫瘍を指摘され当院紹介となり, 画像検査上は子宮, 卵巣ともに正常に描出され原発巣が不明であったが, 腹水細胞診でN/C比の高い, 多核のものを含む大型異型細胞を認め, 非上皮性悪性腫瘍と診断された. 開腹手術により, 子宮から有茎性に発育する充実性腫瘍と腹膜播種病変を認めた. 術中捺印細胞標本では結合性が弱い大型の異型細胞がみられ, 組織所見では壊死像と多数の核分裂像が認められ, 免疫組織化学的染色を加え, 低分化平滑筋肉腫と鑑別が必要であるが, 未分化子宮肉腫と診断した.
結論: 子宮肉腫では腹水中に腫瘍細胞が検出されることはまれであるが, 本症例は腹水中に大型の異型の強い腫瘍細胞が出現し, 非上皮性悪性腫瘍の推定が可能であり, 発生部位や病理診断の推に役立った.

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