日本臨床細胞学会雑誌
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乳腺紡錘細胞癌の1例
山下 展弘加地 澄子勝山 栄治
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2006 年 45 巻 2 号 p. 111-115

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抄録

背景: 乳腺紡錘細胞癌は乳癌の特殊型に分類されるまれな腫瘍で, その細胞所見の報告は少ない.
症例: 52歳, 女性. 平成15年9月より左乳房のしこりに気づき, 近医を受診. 10月, 当院に紹介受診. 左乳房ACDE領域に4cm大の比較的境界明瞭な腫瘤を認めた. 術前穿刺吸引細胞診を2回施行した. 1回目: 泡沫細胞を散見する血性背景に, 多核のものを含む大型異型細胞が少数出現していた. その核は類円形で細胞質はライトグリーンに淡染, 腫大し明瞭な核小体をみた. 2回目: 多数の中~大型の異型細胞が不規則重積性から散在性にみられた. 上皮結合を思わせる部分が多かったが, 散在性の部分では紡錘形あるいは胞体の厚い細胞も認めた. 同年12月, 左乳房切除術施行. 組織所見では, 紡錘形の肉腫様腫瘍細胞が増生し, そのなかに上皮性腫瘍細胞が巣状となり散在していた. 多核巨細胞型の腫瘍細胞もみられたが, 軟骨あるいは類骨形成はなかった. 一部で上皮性腫瘍細胞から肉腫様腫瘍細胞への移行像を認め, 紡錘細胞癌と診断した.
結論: 術前細胞診では組織型の推定は困難であったが, 細胞異型の強い大型細胞や胞体の厚い細胞, 多核細胞など多彩な像を示す場合には紡錘細胞癌も鑑別に入れる必要があると思われた.

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