日本臨床細胞学会雑誌
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悪性腺腫病理診断の現状と診断基準一致の試み
津田 均三上 芳喜加耒 恒壽秋山 太笹島 ゆう子長谷川 匡大石 善丈笠松 高弘
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2006 年 45 巻 2 号 p. 147-153

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抄録

目的:悪性腺腫 (MDA) と分葉状内頸部腺過形成 (LEGH) に関する病理診断の現状を把握し, 再現性の高い両者の鑑別診断の可能性を検討する.
方法:1. 4名の診断者がMDAやLEGHと診断された52例につき各施設の基準で病理診断を行った. 2. 異型のない頸管腺増殖のみの病変をLEGH, このなかに浸潤腺癌の成分が混在する病変をMDAとし, さらにLEGH+上皮内腺癌 (AIS), 通常の腺癌, の4群を設定し, 各組織像を学習後7名の診断者が独立に44例の診断を行った.
結果: 1. 診断者間の診断一致の程度はわずかな一致 (κ=0.115) にとどまり, MDAとされた例の死亡率は13~60%と診断者間で大差があった, 2. 診断一致の程度は4群問でかなりの一致 (κ=0.618) に改善し, 非浸潤群 (LEGHとLEGH+AIS), 浸潤群 (MDAと通常の腺癌) 2群間ではほぼ完全な一致 (κ=0.928) を示した. 非浸潤群22例, 浸潤群14例の5生率は各100%, 54%であった.
結論:MDAとLEGHの病理診断はいまだ混同があるが, 適切な基準の採用と学習により, 再現性が高く予後と関連する病理鑑別診断が十分可能と考えられた. 標準化や普及, 術前診断の検討が課題と考えられる.

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