日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
実践報告
大腿骨頚部骨折地域連携パスの使用実績
小久保 吉恭山崎 隆志佐藤 茂山内 真恵
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2008 年 10 巻 2 号 p. 85-90

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抄録

 大腿骨頚部骨折の地域連携診療計画加算が平成18年度の診療報酬改定で新設されたことを契機にして、近隣の医療機関と地域連携クリニカルパス(以下、連携パス)を作成し運用を開始した。連携パス使用により急性期病院から早期に退院を調整することが可能になった。しかしながら連携パスの使用率は全転院患者のうち27%で高くはなかった。使用率が低迷している背景には、患者の住所と医療機関の所在地といった地理的要因のほかに連携への参加施設が少ない点が挙げられた。現在の連携パスでは書式や運用方法に課題が残されており、従来の医療連携のシステムを超える利点がまだないと考えられた。現時点では連携パスの効果は不十分ではあるが、パス活動を通して施設間での多職種の交流が始まったことはひとつの進歩であった。また、連携パスを実際に使用することで急性期病院から転院した後の患者情報を収集することが可能になった。これまでの大腿骨頚部骨折患者のパスに関する研究は急性期病院の入院期間のみが議論される傾向にあったが、今後は転院後も含めた入院総期間や転院した医療機関からの退院先、最終的な歩行能力の再獲得などに関するアウトカム設定を急性期病院と連携病院双方で検討していくことが期待される。

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© 2008 一般社団法人日本クリニカルパス学会
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