日本クリニカルパス学会誌
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10 巻, 2 号
日本クリニカルパス学会誌 第10巻 第2号
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実践報告
  • 勝尾 信一, 吉江 由加里, 吹矢 三恵子, 角谷 文恵, 酒井 敏秀, 山内 和彦, 二林 幸代, 北出 俊介, 渡邉 まどか
    原稿種別: 実践報告
    2008 年 10 巻 2 号 p. 79-83
    発行日: 2008/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     当院では、大腿骨頚部骨折に対するパスを手術法、受傷時居住地、受傷前移動能力によって10種類のパスに分けている。大腿骨頚部外側(転子部)骨折に対しては、ターゴンネイルを用いた骨接合術を行い、ターゴンネイルAパスは、受傷時の居住地が自宅で、受傷前の移動能力が独歩(杖なし歩行)か杖歩行だった患者に用いている。今回25例を対象に、移動に関するアウトカム8項目に対するアウトカム評価を行った。アウトカムの達成率は、車椅子乗車・平行棒内歩行開始・歩行器歩行自立・杖歩行開始の4項目で50%を超えていた。達成日の中央値は、平行棒内歩行開始・歩行器歩行自立・杖歩行開始の3項目が設定日より早く、車椅子乗車が設定日通りだった。歩行器歩行自立・杖歩行開始・杖歩行自立・外泊の4項目で最終アウトカムと有意な相関があった。アウトカム評価はパスの妥当性の評価であり、歩行器歩行自立・杖歩行自立の2段階でのパス変更が示唆された。最終アウトカムと相関のあるアウトカムはクリニカルインディケーターと捉えることができ、医療の質の評価に重要である。また、この結果を地域連携パスの成績評価の比較対照とすることも可能と考える。

  • 小久保 吉恭, 山崎 隆志, 佐藤 茂, 山内 真恵
    原稿種別: 実践報告
    2008 年 10 巻 2 号 p. 85-90
    発行日: 2008/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     大腿骨頚部骨折の地域連携診療計画加算が平成18年度の診療報酬改定で新設されたことを契機にして、近隣の医療機関と地域連携クリニカルパス(以下、連携パス)を作成し運用を開始した。連携パス使用により急性期病院から早期に退院を調整することが可能になった。しかしながら連携パスの使用率は全転院患者のうち27%で高くはなかった。使用率が低迷している背景には、患者の住所と医療機関の所在地といった地理的要因のほかに連携への参加施設が少ない点が挙げられた。現在の連携パスでは書式や運用方法に課題が残されており、従来の医療連携のシステムを超える利点がまだないと考えられた。現時点では連携パスの効果は不十分ではあるが、パス活動を通して施設間での多職種の交流が始まったことはひとつの進歩であった。また、連携パスを実際に使用することで急性期病院から転院した後の患者情報を収集することが可能になった。これまでの大腿骨頚部骨折患者のパスに関する研究は急性期病院の入院期間のみが議論される傾向にあったが、今後は転院後も含めた入院総期間や転院した医療機関からの退院先、最終的な歩行能力の再獲得などに関するアウトカム設定を急性期病院と連携病院双方で検討していくことが期待される。

  • 田中 恵美, 高橋 周史, 立木 三千代, 馬瀬 久宜, 康生会武田病院パス委員会委員一同
    原稿種別: 実践報告
    2008 年 10 巻 2 号 p. 91-96
    発行日: 2008/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     パス大会におけるパス委員会活動を評価した。

    【方法】パス大会に関連して委員会が行った工夫のうち以下の7項目の成果を評価した。1)パス委員を数チームに分けて教育担当チームがパス大会を企画した。2)パス大会時に毎回アンケート調査を行い結果を分析・評価した。3)年度初めは新人(転入)職員対象に教育的内容とした。4)DPC導入前後はDPCとパスをテーマにした。5)パス大会で実際のパス改訂作業を行った(“パス改訂ライブ”)。6)組織横断的な標準化をテーマにした大会を開催した。7)パス表の記載漏れが多いという問題点に対して、パスのオーデットを行い評価した。

    【結果】1)チーム分けにより、各委員が主体的に活動でき、パス大会のテーマにも工夫が見られた。2)パス大会の改善点、パス運用上の問題点などを明らかにできた。3)当院では人事異動が比較的多く、教育は必須と考えられた。4)DPCに対する理解を深めることでパスの必要性を再認識できた。5)バリアンス分析やパス改訂の必要性を再認識できた。6)標準化の困難さが再認識されたが、他委員会との連携を深めることができた。7)パスの記載漏れの多い現状と理由を職員に周知できた。

    【結論】パス大会におけるパス委員会活動は一定の成果をあげているものと評価でき、今後もパス大会を通じたパス推進活動を継続していく価値があると考えられた。

  • 進藤 篤史, 野口 明美, 齋藤 日出海, 平野 景子, 木村 香織, 後藤 明美, 金谷 武, 阪本 厚人, 平島 淑子, 玉井 和夫
    原稿種別: 実践報告
    2008 年 10 巻 2 号 p. 97-101
    発行日: 2008/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、人工股関節全置換術(以下THA)のクリニカルパス(以下パス)導入前後での術後入院期間と、退院時の歩行能力を比較することである。さらに、THAパス導入後症例のバリアンスを分析することである。2005年1月から2007年5月までにTHAパスを使用した20関節をパス群、THAパス使用前2年間にTHAを施行した24関節をパスなし群とした。術後入院期間はパス群では22.3日、パスなし群では29.2日と有意に短縮した(p<0.05)。杖歩行開始はパス群で6.5日、パスなし群で9日であった。両群とも退院時に歩行自立であった。パス群をさらに入院期間3週以内をA群、3週以上をB群とし比較した。A群は年齢が有意に低く(p<0.01)、歩行開始日が有意に短かった(p<0.05)。術後坐薬使用量はA群で少ない傾向にあった。THAパス導入により、患者と医療者がリハビリスケジュールを意識し入院期間が短縮した。早期退院には、年齢と術後痺痛管理が関与すると考えた。

  • 西村 裕之, 加用 樹里, 松岡 真弓
    原稿種別: 実践報告
    2008 年 10 巻 2 号 p. 103-110
    発行日: 2008/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     「幡多地域連携パス検討委員会(連携パス委員会)」では、切れ目のない脳卒中治療を目指し、2007年5月1日から、当院と11の回復期病院で、「脳卒中地域連携クリニカルパス(脳卒中連携パス)」の運用を開始した。われわれの作成したパスは、紙ベースで、医療者用パスシートと、患者用パスシート、パス連絡表を1セットとし、急性期病院の入院期間によって、短期パスと長期パスの2種類を作成した。

     「脳卒中連携パス」が適応されると、当院診療情報管理室で患者の情報管理を行い、医療ソーシャルワーカー(MSW)の介入の下、転院の依頼を行う。連携病院転院時に、患者は連携パスシートを持参する。そして、連携病院を退院となった時点で、パスは終了となり、当院診療情報管理室ヘパスシートの原本を郵送、管理、情報収集を行う。

     6ヶ月85例の経験では、急性期病院から直接退院によるパス中止が多く、適応の再検討が必要であった。今後使用経験と「連携パス委員会」での検討を重ね、パスを改善していくとともに、維持期、2次予防までの連携方法を確立していきたい。

  • 川村 研二
    原稿種別: 実践報告
    2008 年 10 巻 2 号 p. 111-114
    発行日: 2008/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    【目的】術後の創傷管理の考え方はこの10年間に大きな変化をとげた。泌尿器開放手術において術後早期にシャワー浴を行い、術後創感染率について検討したので報告する。

    【方法】小切開前立腺全摘除術14例、小切開腎摘除術12例、その他の泌尿器科手術27例を対象とした。術後24時間以降に創被覆を除去し、創の被覆消毒は行わなかった。シャワー浴は創を被覆しないで行った。

    【結果】今回の対象の53例では術後の創感染は認めなかった。前立腺全摘除術では、術後2日目までに全例ドレーン抜去が可能であり、尿道カテーテル留置中(術後3から4日目)にシャワー浴を行った症例が14例中10例(71.4%)であった。術後7日目までに全例シャワー浴が可能となった。腎摘除術では術翌日までに全例ドレーン抜去が可能であり、12例全例で術後4日目までにシャワー浴が可能となった。

    【結語】今回の検討で手術創感染を認めなかったことより、周術期管理に大きな問題は無いと思われ、今後も術後早期の創被覆の除去、消毒の廃止、早期シャワー、術後創感染サーベイランスを継続すべきと考えた。

  • 松下 雅樹, 安間 英毅, 加藤 光康, 夏目 唯弘, 浅井 秀司, 大橋 恵, 篠原 三矢子, 渡邉 三幸, 山本 弘昭, 竹村 柾俊
    原稿種別: 実践報告
    2008 年 10 巻 2 号 p. 115-119
    発行日: 2008/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     大腿骨頚部骨折地域連携パスを平成18年9月より運用開始し、入院中のバリアンスを分析し回復期病院からのフィードバックをまとめた。連携パス開始後有意に在院日数が低下したが、パスで設定した14日間より長い状態である。その理由として、回復期病院の空床不足や受け入れ条件の違いが挙げられる。術後合併症によるバリアンスは約2割であった。これらのほとんどは長期臥床が原因で発生する。そのために当院では、受傷後早期手術、術後臥床期間の減少、リハビリの強化のための対策をした。また、術後合併症が発生すると在院日数が延長した。回復期病院退院後当院外来受診、またはフィードバックのあった症例は約6割である。フィードバックより、当院退院後発生した主な合併症・偶発症を把握することができた。今後、回復期病院からのフィードバックをさらに増やし、地域連携パスのバージョンアップを図る予定である。

学会報告(第8回学術集会)シンポジウム4 DPCとパス
  • 中村 廣繁
    原稿種別: 学会報告(第8回学術集会)シンポジウム4 DPCとパス
    2008 年 10 巻 2 号 p. 123-126
    発行日: 2008/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     DPCとクリニカルパス(以下パス)の関係を解析して、経営効率改善と重点疾患群へのマーケティング戦略として活用可能かどうかを検討した。DPCに対応させた肺癌手術パスは平成18年のDPC改定に合わせて変更した新パスで在院日数短縮、診療単価が増加したが、DPC報酬/出来高報酬比はDPC診療点数が削減された影響を受けて低下した。肺癌化学療法における医療効率の比較ではパスにより抗癌剤投与日、検査日、検査回数が標準化され、在院日数の短縮と診療単価の増加に好影響を及ぼした。鳥取県西部地区における当院の患者シェアと年間退院患者数のSWOT解析では競合病院は多いが、患者数の大きいMDC疾患群は消化器系、呼吸器系、循環器系、筋・骨格系などがあり、この分野で自院の特徴を活かして、周囲にアピールできるパスを整備することが重要と考えられた。診療科別のパス適用率とDPC入院期間R未満の解析では両者に相関関係を認めず、パスが使用されずに入院期間が長い診療科にはパスの作成を促し、パスが使用されても入院期間が長い診療科にはパスをDPCに対応させるように改定を促す必要があった。DPC導入病院ではパスによる良質の医療を展開することが重要で、DPCとパスを適切に活用すれば経営効率改善の方策とマーケティング戦略の方向性も見えてくる。

学会報告(第8回学術集会)シンポジウム5 地域連携パス
  • 一その作成過程と問題点
    冨田 栄一
    原稿種別: 学会報告(第8回学術集会)シンポジウム5 地域連携パス
    2008 年 10 巻 2 号 p. 127-130
    発行日: 2008/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     岐阜市および近隣地域におけるウイルス性慢性肝炎(含肝硬変)の地域連携パス(以下肝炎パス)を、各医療機関、医師会の共同作業で作成した。岐阜市医師会を中心に連携実務者協議会を立ち上げ、全体会議で日程、方向性、作成の原則などを検討し、各ワーキンググループ(WG)に分かれてパスを作成した。WGは医師会、病院専門医、かかりつけ医、連携部職員で構成し、計4回でパスの原案を作成し、5回目に最終的な討論を行いパスを決定した。肝炎パスは循環型とし、B型肝炎、C型肝炎、それぞれ3ヶ月、6ヶ月の4種類について、医療者、患者用を作成した。他に、作成過程の問題点を説明した運用要項、定時・緊急時の連絡用ファックス用紙も作成した。開始後2ヶ月で45例に肝炎パスを運用した結果、C型肝炎3ヶ月用が最も多かった。運用後の感想として肯定的な意見が多かったが、一方では問題点の指摘もあり、また、肝炎パス導入効果の評価指標の設定などが今後の課題と思われた。

学会報告(第8回学術集会)ワークショップ1 看護記録とパス
  • 丹野 久美子, 太田 愛, 浪岡 まさみ, 菅原 一美
    原稿種別: 学会報告(第8回学術集会)ワークショップ1 看護記録とパス
    2008 年 10 巻 2 号 p. 131-133
    発行日: 2008/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     急性心筋梗塞(以下AMI)パス施行患者の看護経過記録にどのような内容が記載されているかを知るために、23例の記録を対象に記載された内容の分析を行った。分析方法は、教育的介入を示す看護診断名「非効果的治療計画管理」の記録から一文節ごとに抜き出し、KJ法を用いて分類し、特徴をまとめてラベリングした。また、心臓血管センターに勤務する看護師24名(平均年齢27.3±1.7歳)を対象に、AMIパス施行患者の生活指導に関する記録への記載の有無とその理由を聞いた。その結果、患者の反応と指導内容を知るために75%の看護師が看護経過記録に記載していた。看護経過記録から抽出した文節は385文節で、「指導内容」30.1%、「患者の反応」25.8%、「看護師の解釈」24.4%、「患者情報」19.7%の4つのグループに分類された。「患者の反応」に関する記載は99文節で3つの小グループからなり、「看護師の解釈」に関する記載は94文節で6つの小グループから構成されていた。これらの記録は、看護の専門性を表す上で重要な記録であり、看護師のアセスメントは医療チームにとって共有すべき重要な情報となることが確認できた。「指導内容」、「患者情報」に関する記載はパスのメリットを生かし、記録の短縮化を図る上で今後整理をしていくことが課題となった。

  • ―看護の質向上のために―
    菊内 由貴
    原稿種別: 学会報告(第8回学術集会)ワークショップ1 看護記録とパス
    2008 年 10 巻 2 号 p. 135-136
    発行日: 2008/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     医療の高度化、入院期間の短縮化で治療主体のパスが便利に活用される反面、看護の専門性とは何か、看護師の役割とは何かが希薄化しつつあるように思う。四国がんセンターではこれまでの治療主体のパスとは異なる看護主体のパスという特徴をもつ退院調整連携パスを作成導入している。退院調整連携パスの活用により、患者の生活を支えるという看護専門的を発揮する教育的ツールとなることを期待している。

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