2016 年 18 巻 2 号 p. 115-120
当院では、年間約80件の経皮的内視鏡下胃瘻造設が行われ、その全例で胃瘻造設パス(以下、胃瘻パス)が使用されている。今回、当院パス委員会の活動の一つとして、胃瘻パスのバリアンス分析を通じた見直しと、併せて診療報酬制度改定で求められている『術前の嚥下機能検査と経口摂取回復率に関する成果』への対応を盛り込んだ、胃瘻パス改訂の取り組みに関して報告する。在院日数を基準とした臨床経路調査の結果から、胃瘻造設患者全82例中、期間延長例が76例(92%)と多かったが、これは胃瘻造設目的入院患者と他疾患で入院治療中に胃瘻造設を行う患者の両者に同一の胃瘻パスが使用され、パス終了基準が明確でなかったこととスタッフの認識不足が主な原因で、パス終了基準の明確化、最終アウトカムの変更・追加とスタッフへのパスに関する啓蒙活動によって対処した。パス脱落事例の分析結果から、必要な検査として腹部CT検査をタスクに追加した。また、診療報酬制度改定を踏まえ、胃瘻造設前のタスクに耳鼻咽喉科での嚥下機能評価を追加した。経口摂取回復率は12.1%で、これは高齢者での施行例が多かったことが低値となった理由の一つと考えられたが、関連スタッフでの協議結果から、早期からの多職種での介入、口腔ケアの重要性が提案され、これらをパスのタスクとし、指導と情報共有のツールとして「胃ろうケアガイド」(パンフレット)の使用をパスに盛り込んだ。今回の取り組みを通じて、多職種との連携、情報の共有、意見・情報交換の重要性が改めて認識され、同時に院内パス委員会活動の転機にもなった。今後、胃瘻パスとともに、他の院内のさまざまなパスのアウトカム評価、バリアンス分析を通じた見直しを行い、パスの定期的な見直し、改訂を進め、業務改善と医療の質向上に努めていく。