日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
18 巻, 2 号
日本クリニカルパス学会誌 第18巻 第2号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
実践報告
  • 中島 和香子, 岸 良子, 中村 立一
    2016 年18 巻2 号 p. 109-114
    発行日: 2016/06/25
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

     手術室看護記録は病棟看護師を対象に作られていることが多いが、当院では多職種で情報共有できる独自のクリニカルパス形式の手術室看護記録を作成した。

     今回、手術室看護記録の活用状況についてアンケート調査を実施した結果、手術室看護記録を読んでいる割合は理学療法士が82%、医療事務が100%であった。理学療法士が確認している内容は、手術内容が90%、術前後の関節可動域が80%、術後の外固定の種類・期間が60%で、術後の肢位や術後リハビリテーションに活かせる項目が多かった。医療事務が確認している内容は、手術内容、気道確保種類、神経ブロックの有無が100%、自己調節鎮痛法(PCA)使用の有無、ドレーン・ルート類留置の有無、手術体位、骨移植の有無などが67%で、手術の診療報酬に関する項目が多かった。

     手術室看護記録は単なる病棟看護師への申し送り用紙ではなく、理学療法士、医療事務の多職種において情報共有できる一つのツールとなっており、また術後ケアする上で活用されていることがわかった。

  • 今尾 裕子, 大野 智子, 宇佐美 美雪, 全 秀嶺, 川口 雅裕, 松波 和寿
    2016 年18 巻2 号 p. 115-120
    発行日: 2016/06/25
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

     当院では、年間約80件の経皮的内視鏡下胃瘻造設が行われ、その全例で胃瘻造設パス(以下、胃瘻パス)が使用されている。今回、当院パス委員会の活動の一つとして、胃瘻パスのバリアンス分析を通じた見直しと、併せて診療報酬制度改定で求められている『術前の嚥下機能検査と経口摂取回復率に関する成果』への対応を盛り込んだ、胃瘻パス改訂の取り組みに関して報告する。在院日数を基準とした臨床経路調査の結果から、胃瘻造設患者全82例中、期間延長例が76例(92%)と多かったが、これは胃瘻造設目的入院患者と他疾患で入院治療中に胃瘻造設を行う患者の両者に同一の胃瘻パスが使用され、パス終了基準が明確でなかったこととスタッフの認識不足が主な原因で、パス終了基準の明確化、最終アウトカムの変更・追加とスタッフへのパスに関する啓蒙活動によって対処した。パス脱落事例の分析結果から、必要な検査として腹部CT検査をタスクに追加した。また、診療報酬制度改定を踏まえ、胃瘻造設前のタスクに耳鼻咽喉科での嚥下機能評価を追加した。経口摂取回復率は12.1%で、これは高齢者での施行例が多かったことが低値となった理由の一つと考えられたが、関連スタッフでの協議結果から、早期からの多職種での介入、口腔ケアの重要性が提案され、これらをパスのタスクとし、指導と情報共有のツールとして「胃ろうケアガイド」(パンフレット)の使用をパスに盛り込んだ。今回の取り組みを通じて、多職種との連携、情報の共有、意見・情報交換の重要性が改めて認識され、同時に院内パス委員会活動の転機にもなった。今後、胃瘻パスとともに、他の院内のさまざまなパスのアウトカム評価、バリアンス分析を通じた見直しを行い、パスの定期的な見直し、改訂を進め、業務改善と医療の質向上に努めていく。

  • 松石 雄二朗, 森田 敦子, 脇阪 美帆, 鈴木 千晴, 高橋 理, 伊藤 丈二, 阿部 恒平
    2016 年18 巻2 号 p. 121-128
    発行日: 2016/06/25
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    背景:当院冠動脈バイパス術(CABG)は術後在院日数を9日と設定したクリニカルパスを使用しているが、設定日数より在院日数が延長している印象があったため現状把握を行った。

    方法:2011年4月~2014年3月に単独CABG施行した患者を、クリニカルパス設定どおり退院した群(達成群)と設定日数以上延長した群(延長群)に分け、術前・手術・術中術後・術後因子について単変量解析を行い、有意差を認めた因子についてロジスティック回帰分析を行った。

    結果:対象者127名のうち達成群46名(36%)、延長群81名(64%)であった。2群間の単変量解析では、NYHAⅢ以上(p=0.02)、緊急手術(p=0.04)、手術室で抜管せず帰室(p<0.01)、輸血投与(p<0.01)、術後挿管時間(p<0.01)、初回歩行開始日数(p<0.01)、せん妄(p<0.01)に有意差があった。多変量解析では、せん妄(OR3.02;95%信頼区間 1.03−8.79)の因子が延長群に有意であった。

    結語:パス設定日数どおり術後9日で退院した患者は36%となった。今後クリニカルパス設定日数とクリニカルパスアウトカムの達成率を再度見直すことが課題と考えられる。抽出された要因を用いてパスの改訂を行うとともに、リスク因子ごとのクリニカルパスの作成を行い、患者ケアに生かしていく。

特集(第16回学術集会)
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