2002 年 4 巻 2 号 p. 59-65
穿孔性十二指腸潰瘍のoutcome向上を目指して、治療アルゴリズムを組み合わせたクリニカルパスを作成し評価した。対象と方法:穿孔性十二指腸潰瘍58例のうちretrospectiveに治療法が適切であった53例の治療経過を根拠として処置予定日を設定し、クリニカルパスを作成した。さらに、全症例を保存療法群、腹腔鏡手術群、開腹手術群の3治療群に分類し、ロジスティック回帰分析を用いて治療法選択の危険因子を求めた。結果:治療法選択の独立危険因子は保存療法と腹腔鏡手術では筋性防御の限局化とCT遊離ガスであり、腹腔鏡手術と開腹手術ではCT腹水貯留と年齢であった。服薬コンプライアンス良好で狭窄のない穿孔性十二指腸潰瘍の治療アルゴリズムは、American Society of Anestheologists(以下、ASAと略記)分類と独立危険因子の組み合わせによって保存療法と腹腔鏡手術の適応を決定するのが適切である。さらに、開腹手術の適応はASA分類、独立危険因子の他に、腹腔鏡手術の術中所見による潰瘍状態や腹膜炎の程度により開腹移行を決定するのが適切である。治療アルゴリズムとクリニカルパスに従ってprospectiveに治療した5例の治療後経過は良好であり、入院期間は短縮する傾向を示した。結論:根拠に基づいた治療アルゴリズムとクリニカルパスは穿孔性十二指腸潰瘍の高水準のoutcome達成に有用であったが、さらなる検討が必要である。