日本障害者歯科学会雑誌
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症例報告
多数の先天性欠如歯がみられたアテトーゼ型脳性麻痺の姉妹例
藤代 千晶森崎 市治郎村上 旬平財間 達也田中 健司堤 香奈子関根 伸一秋山 茂久
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2016 年 37 巻 1 号 p. 35-41

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抄録

近年,遺伝子解析法の進歩によって,多数歯の先天性欠如には転写因子PAX9の変異と関連して生じるものがあることが明らかになってきている.今回われわれは,PAX9を含む領域の微細欠失を伴い乳歯と永久歯の多数歯にわたる先天性欠如がみられたアテトーゼ型脳性麻痺の姉妹例を経験した.
症例1(姉,16歳4カ月)は,乳歯列で4歯,永久歯列で智歯を除いた21歯の先天性欠如がみられ,症例2(妹,8歳10カ月)は,乳歯列で4歯,永久歯列で智歯を除いた15歯の先天性欠如がみられた.また,ともにアテトーゼ型脳性麻痺に加え,甲状腺機能低下症,新生児遷延性肺高血圧症および精神遅滞がみられた.
姉妹の口腔内は,多数歯の先天性欠如により,歯の位置移動,歯槽堤の萎縮,空隙歯列および硬いものを咀嚼しにくいとの訴えがみられた.そのため,症例1には床義歯による補綴を行ったが,拒否が強く使用困難であった.
今後,咀嚼機能の問題,審美的な問題に対応するために,本人および家族の心情に配慮しながら発達に合わせた対応をすることが肝要であると思われる.

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© 2016 一般社団法人 日本障害者歯科学会
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