Angelman症候群(以下:AS)は1965年にAngelmanにより“Puppet” childrenとして初めて報告された,15番染色体長腕の部分欠失によって起こる遺伝性疾患である.今回筆者らは全身麻酔下に智歯抜去を行った成人AS患者の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.AS患者の麻酔管理上の問題点は,てんかん発作,麻酔薬のGABAA(gamma-amino butyric acid-A)受容体への影響,精神遅滞による導入時の鎮静などが挙げられる.通常,麻酔薬の多くはGABAをリガンドとするGABAA受容体をターゲットとすると考えられている.ASの遺伝子欠失部位である15番染色体q11~q13領域はGABAA受容体β3サブユニット遺伝子(以下:GABRB3)を含むことより,麻酔作用に対してなんらかの影響が出ることが考えられる.そのため,過去にはGABRB3とは関係ないとされる揮発性麻酔薬やケタミンを使用した報告もある.しかし一方では,ベンゾジアゼピンやプロポフォールを使用しても良好な麻酔管理が行われたとの報告も多い.自験例では,AS患者に対し,プロポフォールを用いた麻酔にて術中,周術期を通して問題なく終了した.