日本障害者歯科学会雑誌
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症例報告
2q23q24.2欠失症候群の歯科治療経験
田中 健司廣瀨 陽介三浦 麻衣毛利 泰士村上 旬平秋山 茂久
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2018 年 39 巻 1 号 p. 16-22

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抄録

2q部分欠失はまれであり,これまで歯科的特徴として高口蓋などの報告はあるものの2q23q24.2欠失症候群の歯科的報告はない.今回,われわれは2q23q24.2欠失症候群の歯科治療を経験したので,その歯科的所見を報告する.

患者は21歳の男性で,う蝕治療を主訴に来院した.家族歴は特になし.合併症として重度知的能力障害,てんかん,合指症,感音性難聴および停留睾丸があり,顔貌の特徴として小頭症,外斜視,カフェオレ斑,眼瞼内反,凹んだ鼻堤,左右非対称の鼻翼,上向きの鼻孔,平坦な人中および下向きの口角を認めた.また歯科的特徴として下顎右側中切歯の先天欠如,上顎左側側切歯の切歯結節および下顎両側第一小臼歯の臼傍結節を認め,下顎前歯は著明な切痕を有し,唇側傾斜と空隙歯列を呈していた.本症例は重度知的能力障害と嘔吐反射もあることから,保護者の希望によりう蝕治療およびその後のメインテナンスに関しては静脈麻酔下にて実施した.

本症例で認められた下顎中切歯の先天欠如や下顎小臼歯の臼傍結節に関しては,過去の報告と比較しても非常にまれな発現と考えられる.現段階では本症候群の特徴であるかは不明であるが,今後報告される2q23や2q24部分欠失症候群患者の歯科的特徴と比較検討することが必要と考える.

2q23q24.2欠失症候群では下顎中切歯の先天欠如や下顎小臼歯の臼傍結節などの歯科的特徴を認めた.本症例は重度知的能力障害を伴っており,今後も継続的な口腔衛生管理が必要である.

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© 2018 一般社団法人 日本障害者歯科学会
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