重症心身障害児・者施設に入所している重症心身障害者(以下,重症者と略す)は,近年高齢化が進み,加齢を要因とする疾患が増加している.今回,病棟職員により舌の白色病変を発見し,切除生検の結果,舌上皮内癌と診断された症例を報告する.
患者は当該病名での初診時年齢63歳女性,髄膜炎後遺症にて施設入所している重症者であった.病棟での口腔ケア時に左側舌下面に白色斑を認め,経過観察していた.約半年後,上顎左側歯肉の疼痛,左側舌下面の白苔を主訴に当科を受診した.
左側舌下面に12×10mm大の白色病変を認め,白板症が疑われた.生検を通法下で行うことは困難なため,全身麻酔下での生検を計画した.早期舌癌の可能性を否定できないため,十分な安全域を設けた全摘生検を行ったところ,病理診断は,舌上皮内癌であった.術後経過は良好で,2年6カ月経過したが,再発はみられず,摂食機能も維持されている.
重症児・者施設では,高齢化により,死因として悪性腫瘍の割合も増加している.自覚症状を言葉で表現できない重症者は,癌を早期発見することは困難で,特に口腔内に発症した癌は進行すると,重症者の大きな楽しみである「食べること」を奪いかねない.今回,病棟職員の口腔ケア時の観察が癌の早期発見に繋がったことより,観察力の重要性が改めて認識された.