日本障害者歯科学会雑誌
Online ISSN : 2188-9708
Print ISSN : 0913-1663
ISSN-L : 0913-1663
原著
介助磨きの姿勢に関する検討 ―歯磨き運動と歯垢除去効果―
村井 朋代大島 邦子野上 有紀子花﨑 美華中島 努丸山 直美早﨑 治明
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 39 巻 2 号 p. 110-118

詳細
抄録

小児や障害児・者および要介護者の口腔衛生には,保護者または介助者による介助磨きが重要である.しかし,その発達や障害の種類・程度・体格や年齢および環境により,介助磨き時の姿勢はさまざまである.今回,日常的に介助磨きを行っている女性歯科衛生士20名を被験者とし,介助磨き時の姿勢と歯磨き運動および歯垢除去効果の関連について検討した.

永久歯列模型を装着したマネキンを仰臥位と対面位の2種類に設定し,一口腔を上下顎前歯部臼歯部頰舌側の12ブロックに分割したうえで,各ブロック10秒間の介助磨き運動を計測した.計測には歯ブラシに装着した三次元加速度計およびストレインゲージを用いた.また,模型にはあらかじめ人工歯垢を塗布し,介助磨き後の歯垢残存面積を計測した.その結果,刷掃法は両姿勢ともに,前歯部舌口蓋側のみ縦磨き,他の部位はスクラッビング法であった.前歯部では両姿勢で1ストローク時間に有意差はなかったが,上顎前歯部口蓋側の三次元変位量は対面位のほうが小さかった.臼歯部では,対面位のほうが仰臥位より1ストローク時間が長く,逆に三次元変位量が小さい,すなわちリズムの遅い運動であった.また,対面位では上顎中切歯口蓋側の歯垢残存量が多かった.介助磨き時の姿勢は,環境や個人の全身および口腔内状況により制限を受けるため統一は困難である.各姿勢の特徴を理解し,より効率的な介助磨きを検討していくことが重要と考えられた.

著者関連情報
© 2018 一般社団法人 日本障害者歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top