2018 年 39 巻 2 号 p. 119-125
東日本大震災が障害児・者の定期的歯科通院に及ぼした影響を明らかにし,災害時の障害者支援に資するために,震災前に定期的歯科受診を継続していた障害児・者を対象として,震災後の歯科受診再開状況を調査した.
震災前に定期受診を継続していた841名を対象として,震災後の初回来院日,震災時の年齢,居住地と主たる障害および震災後12カ月までの当院他科受診の有無を外来診療録から調査し,分析した.その結果,1)定期通院をしていた患者の68.1%が3カ月以内に,83.6%が6カ月以内に受診を再開し,12カ月後にはほぼ平常時の水準となった.2)震災前に定期受診をしていた患者の約8割は,震災後もほぼ同じ間隔で定期受診を継続していた.3)震災前の居住地が津波・原発被災地域内にあった107名では,3カ月以内の再受診者率は49.5%と,それ以外の地域の734名の再受診者率70.8%と比較して有意に低く(p<0.001),経時的に上昇したものの震災5年後も有意に低いまま経過した.4)震災後3カ月および6カ月以内の受診再開に対する関連要因として,津波・原発被災地域であることおよび同じ病院の他の診療科の受診があることが抽出された.5)患者の年齢と主たる障害の種類においては再受診者率に差がみられなかった.
以上より,被災状況が甚大な地域の患者では再開が遅れたものの,定期受診を継続していた患者では一時的に受診が抑制されても1年以内には回復したことが明らかとなった.