日本障害者歯科学会雑誌
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原著
自閉スペクトラム症児者の保護者が感じている食の問題に関するアンケート調査
田村 文誉辰野 隆蒲池 史郎鈴木 健太郎山田 裕之田中 祐子菊谷 武
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2018 年 39 巻 2 号 p. 126-136

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抄録

自閉スペクトラム症(ASD)児者の保護者が感じている食の問題に関する困りごとや要望を明らかにし,適切な支援に繋げることを目的としてアンケート調査を行った.某親の会の会員248名中,4歳以上18歳未満の120名について検討した.アンケートの内容は,保護者,子どもの基本情報,子どもの現在の食事,摂食指導の経験,歯の困りごと,について合計45問を設定し,それらのうち食の問題について検討した.統計処理は,年齢群との関連についてPearsonのχ二乗検定(両側検定)を実施し,さらに個々の年齢群間について下位検定(多重比較)としてFisherの直接法(片側検定)を用いて検討を行った.

回答者のほとんどが母親であった.子どもの性別は男子が8割を占めた.子どもの年齢群別に検討したところ,保護者の悩みである,子どもに合った食事の作り方がわからない,食事を作っている時間が無い,子どもがあまり食べてくれない,の各項目と,子どもの食事の心配ごと・困りごとである,偏食,食べこぼす,集中できない,の各項目は4~11歳時群で最も多く,他の年齢群との間に有意な関連が認められた(p<0.05).

本調査の結果より,ASD児者の食の問題は,年齢に影響を受ける可能性があると考えられた.また,子どもの年齢的には未就学児から小学生までの期間において問題を感じている保護者が多く,偏食,食べこぼす,集中できない,という問題は,高年齢になるに従い減少した.食の問題の項目によって経過観察,あるいは心理的配慮や環境調整が適している問題と,専門的な摂食指導が必要なものとがあることが示された.

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© 2018 一般社団法人 日本障害者歯科学会
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