日本障害者歯科学会雑誌
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症例報告
関節結節切除術が有効であった脳血管性認知症患者の習慣性顎関節脱臼例
加納 慶太村山 高章山本 俊郎金村 成智吉松 英樹秋山 茂久森崎 市治郎
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2019 年 40 巻 2 号 p. 174-178

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抄録

類をみないスピードで超高齢社会に突入したわが国では,今後,顎関節脱臼の発生頻度の増加が予測される.特に,脳血管障害や認知症を伴った患者の場合,自己整復はかなり困難であり,二次的に習慣性,陳旧性へと移行することもある.その場合,長期間の閉口障害が続き,正常な咀嚼や嚥下が困難となり,低栄養状態や誤嚥性肺炎発症のリスクが増加するため,早期に対応することが重要である.今回,著者らは脳血管型認知症患者の習慣性顎関節脱臼に対し関節結節切除術が有効であった1例を経験したので,その概要を若干の文献的考察とともに報告する.患者は74歳男性,起床時に顎関節脱臼状態を入所施設職員が発見し,加療目的にて受診した.顔貌所見では開口状態を呈しており,左右耳珠前方に陥凹を認めた.画像所見では,両側の下顎頭が関節結節の前上方に位置していたが,骨形態に明らかな異常所見は認めなかった.初診日に徒手的整復を行ったが,その後5週間に計9回,再脱臼を主訴に当科受診し,その都度徒手的整復を行った.そのため,臨床診断を習慣性顎関節脱臼とし,関節結節切除術を行った.術後17カ月経過するが,再脱臼などを認めていない.習慣性顎関節脱臼に対する治療法は多く報告されているが,その選択に関する基準はなく,対処に難渋することも多い.治療法の選択に際しては,患者の全身状態とその病態に関する十分な診査,および社会的背景を考慮する必要がある.

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© 2019 一般社団法人 日本障害者歯科学会
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