2019 年 40 巻 2 号 p. 169-173
異食症(pica)とは,非栄養,非食用の物質を少なくとも1カ月以上の期間繰り返し摂食する障害であり,しばしば知的能力障害や自閉スペクトラム症,統合失調症などに合併する.今回われわれは,歯科定期検診のために受診した際の容態確認時に異食による食道閉塞を疑い,内視鏡的に異物を確認し摘出を行った症例を報告する.
患者は知的能力障害と異食のある男性で,受診日の10日前より発熱を繰り返し,経口摂取不全と嚥下困難が続いていた.歯科受診時,随伴する施設職員から経過を聞き,異食による食道閉塞を疑い緊急に内視鏡検査を行ったところ,食道入口部に異物を認めた.麦粒鉗子で異物を慎重に摘出し,粘膜の損傷や異物の残存がないことを確認した.異物は約40×60×5 mmの扁平な板で,床材の一部である疑いが強かった.異物摘出直後に経口摂取不全は解消した.異物摘出後,入所施設内の破損や欠損状況の確認を行い,必要に応じて修理を行った.また施設職員が異食状況を観察,見守りながら安全管理を徹底している.外出時に木の葉や土を異食することを防げないことはあったが,以後の5年間は食道閉塞などの深刻な事態は発生していない.
知的能力障害者らが故意に異食した場合,本人からの自覚症状の訴えがない場合も多く,診断が遅れ,重篤な合併症を発症する危険がある.異食を軽減するために,また早期発見により必要な処置を行うために,多職種間で連携し情報を共有することが不可欠である.