7pトリソミー症候群は7番染色体短腕の部分過剰を認める染色体異常で,重度の知的能力障害や多岐にわたる顔貌の特徴を有する症候群であり,歯科では報告例のないきわめてまれな疾患である.今回,6年間にわたる継続的な歯科管理を経験したため報告する.本症例は24歳男性で,18歳時に学校検診で虫歯を指摘され当大学歯学部付属病院特殊歯科に来院した.本症例における7pトリソミーは親の7番染色体短腕と15番染色体長腕の相互転座に由来しており,全身所見は低身長,大きな額,両眼隔離,短い鉤鼻,耳介異形成を認めた.口腔所見は高口蓋,下顎左右側第二大臼歯にう蝕があり,口腔清掃状態不良で下顎前歯唇舌側歯頸部に歯石を認めた.また,パノラマエックス線写真より湾曲が小さい歯根をもつ上顎大臼歯とその髄室の拡大を認めた.経過としては2011年の初診から3回のオリエンテーションを実施したものの体動に変化を認めなかったため,ベルトと父親による徒手抑制下で開口器を用いて下顎左右側第二大臼歯のコンポジットレジン充塡処置を実施した.その後,2カ月ごとの口腔ケアを実施し保護者にホームケア指導を実施するも,2015年2月に上顎左側側切歯の歯肉腫脹と動揺を認め,同年9月に抜歯,以降,慢性辺縁性歯周炎により3本の抜歯をした.
本症例は抜歯以前には前歯部叢生もあり形態的に問題があるうえ,重度知的能力障害があり,歯列弓幅径ならびに歯列弓長径が小さく,口唇,頰の緊張も強く,ホームケアが困難であった.さらに,上顎大臼歯は湾曲が小さい歯根のため容易に歯の動揺をきたす形態であることから,本疾患は早期に歯周病が重症化する可能性が示唆された.