スペシャルニーズのある患者は,歯科治療に不適応な場合も多く,特に根管治療は困難である.今回,スペシャルニーズのある患者の根管治療の予後調査を行ったので報告する.
2019年12月から2020年2月までの3カ月間に長崎県口腔保健センター歯科診療所に受診した障害のある患者のうち,過去に長崎県口腔保健センター歯科診療所で根管治療を行った歯を対象とし,臨床所見とデンタルエックス線写真所見から予後を判定した.調査対象は48人(平均年齢47.3±12.0歳)の150歯であった.診断名は,歯髄炎61例(40.7%),根尖性歯周炎89例(59.3%)であった.障害別では,知的能力障害15名(31.3%),自閉スペクトラム症11名(22.9%),脳血管障害後遺症7名(14.6%),その他,脳性麻痺,ダウン症候群,精神疾患などであった.行動調整は,身体抑制13名(27.1%),静脈内鎮静法4名(8.3%)であった.予後良好と判断した歯は136例(90.7%)であり,歯髄炎96.7%,根尖性歯周炎86.5%であった.また,根尖性歯周炎のうち,治療後に根尖部透過像が消失した歯は38例(63.3%),縮小した歯は8例(13.3%)であった.
今回,スペシャルニーズのある患者の根管治療の予後調査を行った結果,健常者の報告と同等に良好な結果であった.障害があり治療が困難だからと安易に抜歯せず,的確な根管治療を行うことにより,スペシャルニーズのある患者の口腔の健康を長く維持できると思われた.