2023 年 44 巻 1 号 p. 34-38
本学歯学部附属病院障害者歯科で行う全身麻酔は,2泊3日の入院下の周術期管理を基本としてきたが,2018年12月から日帰り全身麻酔システムの運用を開始し,3年が経過した.今回,日帰り全身麻酔を施行した症例の患者背景・処置内容・全身麻酔法・合併症の有無について統計的検討を行った.
日帰り全身麻酔は73例で,男性は43名,女性は30名であった.このうち39名が障害児・者であった.処置内容は,智歯抜歯術が最も多く,保存・補綴治療を目的とした症例は13例のみであった.全身麻酔法はセボフルランによる吸入麻酔薬による全身麻酔を主体とした.現在まで大きな合併症や問題点はなく経過している.
障害者歯科の入院管理下での全身麻酔症例数および外来での静脈内鎮静法症例数は,日帰り全身麻酔を開始する前後の3年間で変化がなかったため,新たに日帰り全身麻酔の適応症例が増加したと考えられる.障害者歯科では,患者本人や家族の都合で入院が困難となる症例や多数歯の処置を短期間のうちに行うべき症例,通法下の処置や静脈内鎮静法を適用すると治療の回数が多くなることが予想される症例などは,日帰り全身麻酔下治療を選択することで,患者やその家族の負担が軽減されることが想定される.