日本障害者歯科学会雑誌
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原著
自閉スペクトラム症者における口腔内診査とポリッシングブラシによる歯面研磨のレディネス
鈴木 香保利小笠原 正増田 裕次
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2023 年 44 巻 3 号 p. 223-233

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抄録

口腔内診査およびポリッシングブラシによる歯面研磨(以下ポリッシング)について,自閉スペクトラム症(ASD)者の口腔内診査およびポリッシングに適応する判断基準を検討した.対象者は2019年4月から2023年3月までに西尾市障害者歯科診療所およびよこすな歯科クリニックへ初診で来院したすべてのASD者90名とした.暦年齢,性別,発達年齢,強度行動障害(厚生労働省1993判定基準表を使用),障害特性,過去の歯科治療経験,医科治療経験について調査し,「車から出る」から「口腔内診査」「ポリッシング」までの13ステップについて,初診時の受診行動を観察し,初診時に不適応行動が観察された者はトレーニングを行い,その結果を評価した.分析方法はFisherの直接確率検定あるいはχ2検定と決定木分析を用いた.分析の結果,暦年齢,発達年齢の6分野,強度行動障害の「激しいこだわり」「食事関係の強い障害」「著しい多動」,強度行動障害得点,障害特性の「常同行動」「奇声」,歯科治療経験の「歯科抑制経験」「歯科定期健診の有無」「歯科定期健診時抑制経験」,医科治療経験の「医科抑制経験」が影響していた.ASD者における口腔内診査およびポリッシングの適応判断基準は「基本的習慣」と「言語理解」の発達年齢が3歳2カ月以上であった.医科における抑制治療経験のある者は口腔内診査およびポリッシングができない傾向にあったことから,発達年齢に配慮し,嫌な思いをさせないことが重要であると考えられた.「基本的習慣」と「言語理解」の発達年齢が3歳2カ月以上のASD者は,97.2%の確率で地域の歯科医院において,口腔健康管理のための定期健診として口腔内診査とポリッシングを受けられる可能性があることが示された.

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© 2023 一般社団法人 日本障害者歯科学会
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