2024 年 45 巻 2 号 p. 112-116
Gillespie症候群は,非進行性小脳失調,両側性無虹彩症,知的能力障害の3徴候を特徴とする先天性神経疾患であり,症例数が少なく非常にまれな疾患である.今回われわれは,Gillespie症候群患者の全身麻酔下過剰歯抜去術を経験した.患者は9歳男児でGillespie症候群の既往があり,小脳性運動失調,虹彩形成不全,知的能力障害,頸椎低形成の症状を認めた.手術は上顎右側埋伏過剰歯に対して全身麻酔下での抜去術が予定された.全身麻酔は,セボフルランによる緩徐導入で行った.筋緊張低下のため,導入時の筋弛緩薬の投与量を低減し,通常量と同程度の効果時間で効果が得られた.頸椎低形成に対しては,ビデオ喉頭鏡を用いて愛護的に気管挿管を行った.また,小脳性運動失調による嚥下機能障害により誤嚥しやすいため,抜管直前の口腔内吸引と麻酔からの確実な覚醒を確認してから抜管を行い,退室後は誤嚥のないように観察を行うため入院管理とし,安全な周術期管理を行えた.Gillespie症候群は非常にまれな疾患であり,症候群についての報告が少ないこと,小脳性運動失調による筋緊張低下や嚥下機能障害が周術期に筋弛緩薬の効果遷延や誤嚥のリスクを有すること,そして患者によっては3徴候以外にも多彩な臨床症状を認める疾患であることから,患者に対する十分な術前診察,筋弛緩薬のモニタリング,そして術後は誤嚥がないよう入院下で管理する必要がある.