2024 年 45 巻 2 号 p. 128-133
現在の超高齢社会において,血液透析(以下HD)患者も高齢化が進んでおり,歯科を受診する高齢のHD患者数が増加している.HD患者の口腔内では唾液量の減少やADLの低下に伴う口腔清掃不良により要抜去歯を多数認める.全身的には,脳血管障害や心血管系の疾患を合併していることが多く,抗血栓療法を施行されている患者も多くみられる.HD患者の抜歯はその病態の特殊性から一般的に敬遠されがちであり,十分な治療を受けられていない患者にしばしば遭遇する.また,HD患者の抜歯に関する報告は少なく,抜歯時の安全性については十分な検討がなされていないのが現状である.そこで今回,当科において抗血栓療法継続下での抜歯時に起こる合併症について,HD患者群と非HD患者群を比較し,その安全性を検討した.結果は両群間で年齢において統計学的有意差を認めたが,性別,抜歯本数,出血性合併症,その他の合併症では有意差を認めなかった.また,出血性合併症と歯肉炎の重症度には統計学的有意差を認めた.抗血栓療法継続下での抜歯の際の重大な出血性合併症の起こるリスクファクターは,局所歯肉の炎症状態であり,HDがリスクファクターとならない可能性が示唆された.以上の結果,抗血栓療法中のHD患者でも非HD患者と同様に普通抜歯を行うことが可能であると考えられた.