2026 年 47 巻 1 号 p. 64-71
脳性麻痺児・者は感覚機能障害,知的障害,特有の運動障害などにより,歯科治療や口腔衛生管理において,苦慮することが多い.脳性麻痺児・者に対する歯周治療や口腔衛生指導において,歯科衛生士が直面する課題を明らかにし,より安全かつ効果的な対応について検討した.
日本障害者歯科学会の会員で,調査に同意が得られた脳性麻痺児・者の歯科診療に携わる歯科衛生士を対象とした.無記名自記式質問紙法を用いて歯科衛生士による歯周治療,口腔衛生指導等において苦慮した点と対応・工夫について,収集・分析した.
分析対象となった歯科衛生士は108名,平均年齢(SD)49.1(10.5)歳で,卒業後歯科診療経験年数は25.7(11.1)年であった.歯科衛生士は,歯周治療,口腔衛生指導において,不随意運動,開口保持困難,異常絞扼反射,誤嚥リスクなどに苦慮していることが明らかとなった.それに対して,バキューム操作や姿勢調整などを工夫していた.
脳性麻痺児・者の歯科診療において,歯科衛生士による歯周治療,口腔衛生管理には困難を伴うことが多いが,さまざまな工夫をして対応することで,歯科疾患の発症や重症化の予防に努めていると考えられた.そのためには患者一人ひとりの障害特性に応じた適切な口腔衛生管理・支援を提供する必要があり,歯科衛生士の専門性の向上と,福祉・医療・家族との連携体制の強化が不可欠であると考えられた.