2023 年 32 巻 4 号 p. 289-294
症例は54歳男性.近医で両下肢浮腫の精査中に,右下肢痛および痺れを自覚した.CTにて腹部大動脈および総腸骨動脈内の壁在血栓と,右膝窩動脈の血栓閉塞を認めた.各種検査からネフローゼ症候群を背景として過凝固状態となり,血栓形成を来したと考えられた.腹部大動脈内血栓は抗凝固療法の方針とし,右下肢急性動脈閉塞症に対して緊急血栓除去を施行された.しかし術後3日目に施行されたCTにて,右膝窩動脈は再度閉塞を認めており,再度血栓除去ならびに下腿動脈へバルーン拡張術を施行され血流の改善を認めた.アンチトロンビンを術後補充することによりヘパリンの治療効果は安定し,下肢症状再燃なく経過した.腹部大動脈内の血栓も縮小を認めた.ネフローゼ症候群に伴う動脈血栓症の発症は比較的稀であるが,特に下肢動脈閉塞では下肢切断に至るなど重症化の可能性があり,重要な合併症として認知すべきである.