抄録
近赤外分光法の土木地質材料への適用可能性を検討するため,一軸圧縮強度・P波・S波速度を測定した山陰高山期花崗岩類供試体(8検体)および領家花崗岩類供試体(18検体)において,長石類10粒子の近赤外反射スペクトルを測定した.反射スペクトルをクベルカ・ムンク式で吸収スペクトルに変換し,1,450,1,950,2,250,2,350 nm付近の吸収帯面積の平均値を求め,岩石物性値との相関を調べた.その結果,山陰高山期花崗岩類の長石類の2,250,2,350 nmの吸収帯面積および領家花崗岩類の長石類の1,450,1,950nm吸収帯面積と岩石の強度・速度特性に比較的良い負の相関が認められた.X線回折法および偏光顕微鏡観察結果と対比すると,山陰高山期花崗岩類長石類の2,250,2,350 nmの吸収帯面積は,長石類の絹雲母等への粘土化を,領家花崗岩類長石類の1,450,1,950 nm吸収帯面積は,粘土の層間水・吸着水に対応していると考えられた.これらの長石の水和(粘土化)度を近赤外吸収帯面積で評価することができ,またそれらが岩石の強度低下の指標となる可能性が示唆された.