応用地質
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ブータン王国における道路斜面防災点検の災害要因の定量的評価
桑野 健岩崎 智治原 崇戸沢 正徳
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2017 年 58 巻 3 号 p. 166-177

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抄録

ブータン王国は国土の約95%が標高600m以上の山岳国である.同国では道路が主要な交通・輸送手段であるが,国土の大部分が険しい山岳地帯で,十分な斜面災害対策が実施されていないため,道路のいたる所で斜面災害が頻発し他地域から断絶される地域が発生し,農作物出荷や人の移動に支障をきたしている.

そこで著者らは,独立行政法人国際協力機構の「道路斜面管理マスタープラン調査プロジェクト」の一環として,同国で斜面防災点検を実施し,ブータン独自の点検帳票を提案した.本研究では多変量統計解析の一種である数量化理論を用いて災害形態毎に影響を与える要因とその影響度を検討し,ブータン専用の点検帳票に記載すべき災害要因並びに点数(重み付け)を決定した.

解析の結果,ブータン王国における岩盤斜面崩壊では「崩壊性要因を持つ地形」,「表土及び浮石・転石の状況」,「斜面勾配」が特に危険度を大きくする要因であり,土砂斜面崩壊では「流れ盤」と「斜面勾配」が,地すべりでは「地すべり地形」が特に影響を与えていることが明らかとなった.これらの解析結果を通して,ブータン王国の道路斜面災害に対して特に注意を払うべき斜面の特徴や条件が明らかとなった.

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© 2017 一般社団法人 日本応用地質学会
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