2017 年 58 巻 3 号 p. 178-187
本研究では,北海道幌延地域に分布する新第三系堆積岩を対象に,ボーリング孔において実施された比抵抗検層結果から地下水の水質を把握するための手法について検討を行った.比抵抗検層結果からの水質の推定については,Archieの式等を用いて等価NaCl濃度を算出した.この計算により求められた等価NaCl濃度と,ボーリングコアから抽出した間隙水のNaCl濃度の分析値をt検定により比較した結果,対象としたボーリング孔11孔のうち9孔において有意差(有意水準5%)がないと判断できた.これらのボーリング孔では算出したNaCl濃度と分析値の間に良い相関が認められたことから,比抵抗検層結果に基づき等価NaCl濃度が算出できることを示唆した.分析値と計算値が一致しなかった2孔のボーリング孔については,ボーリング孔掘削時の掘削水が孔壁から岩盤へ浸透したことにより,比抵抗検層の対象領域における間隙水の比抵抗値が変化したためと考えられる.これらを踏まえ,比抵抗検層結果から間隙水の等価NaCl濃度を推定する際の注意点などを整理するとともに,実際の調査現場において適用する際の手順を提示した.