2023 年 64 巻 5 号 p. 255-262
令和4年8月の前線大雨によって津軽平野の岩木川支流の中里川において越流を伴わない堤防の決壊が生じた.氾濫原に形成された破堤堆積物について,UAVによる空中写真撮影,ピットの掘削・壁面観察,堆積物の粒度分析などを行った.その結果,破堤堆積物は下位から砂礫層(ユニット1),青灰色の細粒砂層(ユニット2),淡褐色の泥混じりの中~粗粒砂層(ユニット3),淡黄色の中粒砂層(ユニット4)の4つの堆積ユニットに区分できる.各堆積ユニットは,堤体の浸透破堤が始まった時期,堤体の開口部から河床の堆砂が流出した時期,破堤の拡大に伴い氾濫流が堤内地に大量に流入した後に徐々に減衰していく時期,2回目の増水によって氾濫流がさらに流れ込んだ時期に,それぞれ堆積したと推定される.