応用地質
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化学的風化に伴う微量・希土類元素の挙動
男鹿半島, 女川層堆積岩の例
木村 進一鹿園 直建野原 昌人岩井 修平
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1999 年 40 巻 5 号 p. 281-294

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抄録

酸化的環境下における堆積岩中の微量・希土類元素の挙動を知ることを目的とし, 中新統女川層の頁岩, 珪質頁岩の化学的風化に伴う鉱物学的, 地球化学的変動について検討を行った.
新鮮岩石の黄鉄鉱は風化岩石において消失し, 水酸化鉄が生成される. 全岩中のP, Mn, Co, Ni, Cu, Mo, Pb, U, REEs含有量は, 新鮮岩石と風化岩石とで著しい組成の相違が認められる. 風化岩石におけるP, V, Mo, Cr, Pb, U, REEsの減少率Fe2O3*付加率が多い試料ほど少なくなる傾向が認められ, このことは風化により溶脱された微量・希土類元素は水酸化鉄に吸着され, 再び岩石に濃集することを示すのだろう.
ただし, 頁岩と珪質頁岩とでは, 水酸化鉄による溶脱元素の吸着率に相違が認められる. 頁岩風化岩石の水酸化鉄の元素吸着率は珪質頁岩におけるものより全般的に少ない. 頁岩と珪質頁岩の鉱物組成を基に考察すると, 黄鉄鉱に富む頁岩においては, 珪質頁岩より低いpH条件で風化が進行したため, 溶存化学種と水酸化鉄の電荷的性質が変化し, それほど元素は有効に水酸化鉄に吸着されなかったと推察される.

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