応用地質
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結晶片岩中のスメクタイト含有破砕帯の膨潤特性と隆起メカニズム
田村 栄治浄内 明松崎 伸一長谷川 修一
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2007 年 48 巻 2 号 p. 80-89

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抄録

基礎岩盤中の破砕帯は沈下だけでなく, 膨張により地盤に障害を発生させることがある. 三波川帯の泥質片岩域で, 最大厚さ25mの切土がなされた破砕帯上に直接設置したコンクリート基礎が, 基礎設置後7年間で最大66mm隆起した. 基礎隆起の発見後の調査から, 基礎の隆起原因は, 破砕帯に膨潤性の粘土鉱物であるスメクタイトが多く含まれているためであることがわかった. 本論では, 破砕帯の室内試験, 原位置試験によって, スメクタイト含有破砕帯の膨潤特性を明らかにし, その結果, 地山の掘削に伴う土被りの除去後, スメクタイトの膨潤を伴う吸水膨張が地表から地下へ進行することによって, 徐々に地盤隆起が発生した可能性が高いことが判明した. 土被り圧がスメクタイト含有破砕帯の膨張圧より大きい深度約8m以深では, 膨張は発生していない. スメクタイトは未風化域の破砕帯に一様に含まれており, その生成要因は熱水変質である可能性が高い. 基礎のレベル観測データから将来の隆起予測を行うとともに, 地質構造とスメクタイト含有破砕帯の載荷圧力と吸水膨張率の関係を用いて隆起モデルを構築し, FEM解析による隆起予測解析を行い, レベル観測による隆起予測の妥当性を検証した.

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© 日本応用地質学会
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