抄録
糖尿病足病変は糖尿病神経障害や末梢動脈疾患といった内的要因と, 足底圧異常や外傷, 足部変形, 関節可動域制限といった外的要因が複合的に関連し, 発症するとされている. 特に, 歩行中の足底圧異常の原因には, 糖尿病患者の運動学的・運動力学的要因が関連する. これに加えて, 糖尿病患者や糖尿病神経障害患者は, その病態の影響により, 歩行機能の低下をきたし, 転倒のリスクが高い. 糖尿病足病変の発症や, 転倒による二次障害は, 身体的な制限とともに, 生活の質を著しく低下させる. そのため, 患者の足を守り, 生活を守るためには, 糖尿病神経障害患者や, 糖尿足病変患者の歩行の運動学的・運動力学的変化を考慮し, 創傷の治癒や再発予防, 発症予防, 転倒予防を目的とした介入を検討することが重要となる. これらの点から, 本稿では, 糖尿足病変患者および糖尿神経障害患者の歩行機能の特徴を, 運動学的運動力学的観点から解説する.