抄録
頸動脈破裂は,頭頸部癌治療における致命的な合併症であり,その致命率は40%とされる。今回われわれは頭頸部癌治療に関連した頸動脈破裂を発症し,救命し得た4例を経験した。いずれも頭頸部癌再発例で,症例1は総頸動脈損傷による術中破裂,症例2は創部感染による総頸動脈の破裂,症例3は術後の創部感染の反復による2度の頸動脈破裂,症例4はニボルマブ投与で腫瘍が縮小し,頸動脈の体外露出に感染が加わったことによる頸動脈破裂である。治療法の選択にあたっては頸動脈破裂リスクを十分に考慮し,発症の際には症例ごとの病態に応じた止血・救命を迅速かつ的確に行えるよう普段からの蘇生訓練,他科との連携が重要であると考えられた。