2022 年 31 巻 3 号 p. 273-277
成人後,頭部外傷を契機に反復するようになった髄膜炎を精査し,内耳奇形が助長因子と考えられた1例を経験したので報告する。症例は68歳男性で,左先天性難聴の既往があった。4年前の頭部外傷後より髄膜炎を反復するようになり,持続する左水様性鼻漏より髄液漏が疑われた。鼻腔ファイバースコピーでは耳管咽頭口より無色漿液性液体の流出を認め,髄液鼻漏と考えられた。側頭骨CT検査では左蝸牛・半規管の形成不全を認め,Mondini型内耳奇形を認めた。髄液持続ドレナージ下に中耳充填・内耳窓閉鎖術を行い髄液漏を停止させ,髄膜炎の発症を抑えることができた。反復性髄膜炎の鑑別診断には内耳奇形の検索を行う必要があると考えられた。