抄録
症例は77歳女性。主訴は頸部腫瘤で,甲状腺全摘出術,左D2a郭清術を施行した。pT4a pNlbpEX2-左反回神経で気管浸潤は認めず,高細胞型乳頭癌と診断された。2ヵ月後から呼吸困難が出現し,症状が増悪したためCT検査を施行したところ,輪状軟骨直下から気管内に腫瘍を認め,穿刺吸引細胞診では低分化型乳頭癌が疑われた。鎖骨を部分切除して,胸骨上縁レベルまで気管を喉頭および食道の一部と共に合併切除し,右頸部郭清術,前腕皮弁パッチによる食道再建術を施行した。病理組織は扁平上皮癌で,TTF-1やthyroglobulinの発現は認めず,原発性気管癌の同時重複と考えられた。術後照射50Gyを施行したが,半年後肺転移,多発骨転移を生じ,手術から1年1ヵ月後に永眠(原病死)された。