Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
グラジオラス園芸品種の花に含まれるアントシアニンと花色への貢献
竹村 知子高津 康正霞 正一丸橋 亘岩科 司
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2008 年 77 巻 1 号 p. 80-87

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抄録

グラジオラス 6 品種‘Beijing’,‘Juku-gaki’,‘Fado’,‘Ben Venuto’,‘Marches’および‘Violetta’の花に含まれるアントシアニンを各種クロマトグラフィーによって分離した.得られた 11 種類のアントシアニンは,TLC, LC-MS, HPLC 分析における基準標品との比較により,それぞれ,cyanidin 3-O-rutinoside-5-O-glucoside, malvidin 3-O-rutinoside-5-O-glucoside, pelargonidin 3-O-rutinoside-5-O-glucoside, peonidin 3-O-rutinoside-5-O-glucoside, petunidin 3,5-di-O-glucoside, malvidin 3,5-di-O-glucoside, pelargonidin 3,5-di-O-glucoside, cyanidin 3,5-di-O-glucoside, peonidin 3,5-di-O-glucoside, pelargonidin 3-O-rutinoside および malvidin 3-O-glucoside と同定した.また,グラジオラス 84 品種の花に含まれるアントシアニンの組成をHPLCによって分析し,その組成と花色との関連を検討した.これらの品種のうち,‘Blue Isle’と‘True Love’以外についてはこれまでアントシアニンに関する報告はない.これらの分析の結果,紫色系統の主要アントシアニンは malvidin 配糖体で,微量成分として petunidin 3,5-di-O-glucoside を含んでいたが,delphinidin 配糖体は検出されなかった.delphinidin についてはグラジオラス品種で従来から報告されているが,主要色素ではない.今回,グラジオラス品種のより青色味の強いといわれる品種でも,その花色は malvidin によって発現していることが実証された.これらの生花被片の吸収スペクトルを測定したところ,542~572 nm の範囲に極大が出現した.これからアントシアニンがフラボノイドのような共存化合物によってアントシアニン自体の色調を変えていること,すなわちコピグメント化されていると推定された.赤色系統は pelargonidin 配糖体のみが含まれており,cyanidin を主要色素とする赤色系品種はないと考えられた.ピンク色系統はさまざまなアントシアニン,pelargonidin, cyanidin, peonidin, petunidin および malvidin が含まれているが,それらは紫,赤色系統と比較して相対的に含有量が少なかった.黄色および白色系統のほとんどの場合,アントシアニンは検出されなかった.

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© 2008 園芸学会
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