Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
環状剥皮処理によるシンク・リミット状態がリンゴ若木の光合成速度を低下させる要因の解析
成 鈺厚荒川 修葛西 身延澤田 信一
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2008 年 77 巻 2 号 p. 115-121

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抄録
4 年生のリンゴ樹を用いて,環状剥皮処理によって光合成速度が低下する要因を解析した.3 年生枝と 2 年生枝の短果枝と新梢における葉の光合成速度は,環状剥皮処理後 6 日目に,処理前に比べて 40–50% 低下し,同時に気孔コンダクタンスは処理前に比べて約 60%低下した.葉内,樹皮および木部におけるデンプン含量は大きく増加した.光合成速度と気孔コンダクタンスとの間に正の相関が認められた.細胞間隙 CO2 濃度には明らかな変化が見られなかった.一方,環状剥皮処理によって葉面積当たりの ribulose-1,5-bisphosphate carboxylase(RuBPcase)の活性が低下したが,これは酵素量当たりの RuBPcase 活性の低下によるものと考えられた.新梢の葉面積当たりの RuBPcase の initial activity は特に著しく低下した.そして,光合成速度と葉面積当たりの RuBPcase の initial activity との間に正の相関が認められた.これらの結果より,環状剥皮処理によってシンク・リミット状態になったリンゴ若木の側枝上の短果枝葉と新梢葉における光合成速度の低下は,主に気孔の閉鎖と葉面積当たりの RuBPcase 活性の低下が原因であったことが推察された.
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© 2008 園芸学会
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