2008 年 77 巻 4 号 p. 374-381
12 種類のウメの S-RNase 対立遺伝子を Prunus 属 S-RNase 遺伝子特異的プライマーセットによる PCR によって増幅し,増幅産物のクローニングを行った.その結果,これまでに報告されている S1-~S10-,Sf-RNase 遺伝子に加え,新たに S11-RNase 遺伝子を同定した.また,新たに S 遺伝子型を更新した‘加賀地蔵’(S6S10),‘梅郷’(S6S10),‘織姫’(S11Sf)の 3 品種を含む 14 品種の S 遺伝子型を決定した.さらに,S1-~S11- および Sf-RNase 遺伝子について第 1 イントロン長および第 2 イントロン長を明らかにした.しかし,S3-,S9-,S10-RNase 遺伝子と S5-,S6-,S11-RNase 遺伝子の第 2 イントロン長には顕著な差異がみられず,Prunus 属 S-RNase 遺伝子特異的プライマーセットによる PCR によってこれらの S-RNase 遺伝子型を区別することが困難であったため,これらの S-RNase 対立遺伝子を特異的に増幅するプライマーセットを開発した.その結果,Prunus 属 S-RNase 特異的プライマーセットと S-RNase 対立遺伝子特異的プライマーセットによりウメの 12 種類の S-RNase 対立遺伝子を区別することが可能になった.本研究で得られた S-RNase 遺伝子の配列情報および新たに開発した S-RNase 対立遺伝子特異的プライマーセットは,今後ウメの S ハプロタイプを同定するために非常に有用なものであるだろう.